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​第八話 後編

 頭がズキズキと痛んだ。眠りながら、自分はまだ眠っているという意識がある。耳に雑音が混じり、妙にうるさい。そんな中、誰かの会話が聞こえてきた。
「これ、全部あいつが一人でやったのか?」
 ラウルの声だ。
「僕たちが到着したら、もう既にこうなっていたよ。肉片やら体の部位が散らばって、血の海になっていた」
「……遺体に、抵抗した傷跡がない。抵抗する間もなく殺した、ってことか?」
「そういうことだろうね。つくづく、敵じゃなくて良かったと思うよ」
 何か、おぞましい会話をしているようだった。だが頭が痛むせいで、はっきりしない。暫くして、何か冷たいものが額に触れるのを感じた。それが心地よく、リアの意識が浮上する。
「……ん」
 眠りから目を覚ますと、ノエがいた。ランタンの明かりがついており、外はもう夜になっているのだと知る。
「あ、起こしてしまいましたか?」
 どうやら、濡れタオルを額に置いてくれたようだった。リアはノエを見て、ほっとする。
「冷たくて、気持ちいい」
「リア先輩、少し熱があるんですよ」
「熱? 嘘」
 リアは目を丸くした。
「嘘じゃないですよ」
「私、怪我をしてもすぐ治るし、風邪だって、滅多にひいたことがないよ。……体調を崩すなんて、どれぐらいぶりだろう……」
 ノエは呆れたように、溜息をついた。
「魔の者には、魔の者特有の病気があるんです。人間の薬はあまり効きませんしね。だから、これからは体調に注意しないといけません。体調を崩したら、すぐに教えてくださいね」
「うん……」
 リアはちらりと、ノエを見上げた。
「どうかしましたか?」
「……やっぱりノエ君って、ミシェルに似てる」
 そんなことを言っては彼が気分を害するのでは、と思ったが、ノエはどこか面白そうにしていた。
「リア先輩って、本当にミシェルっていう人が好きですよね」
 指摘をされ、苦笑した。自覚があるだけに、言い逃れできない。
「うん……。本当の家族のように、仲が良かったから。……ミシェルから手紙の返事はないけれど、私は今でも定期的に手紙を送ってるの。読んでくれているかは、わからないけれど……」
「きっと、読んでくれていますよ」
 そうだと嬉しいと思った。リアは体をノエのほうへ少し向ける。
「ノエ君は、容姿はミーシャに似てるけど、性格は全然違うよ」
「そうなんですか?」
「うん。ミーシャはすごく人見知りをするし、慣れてない人には寡黙なの。私には結構、きついことも言ってくるんだけれど」
「へぇ」
「あぁ、でも……、似てる部分もあるかな」
「どんなところですか?」
「私に対して、過保護なぐらい甘やかすところ」
「ふふ。そうなんですね」
 朗らかに言われ、リアは頬を膨らませた。
「ノエ君は、甘やかしすぎなの。もっと厳しくしてくれないと」
「リア先輩が思っているほど、僕は甘やかしていないですよ。本当なら、身の回りの世話を全部、僕がしたいぐらいなんですから……」
「ノエ君は、執事になりたいの?」
「いいですね。リア先輩の専属執事になりたいです」
 冗談か本気なのか、わからなかった。否、冗談であることを祈る。
 そこで、テントの中にシリルが入ってきた。
「ノエ。話がまとまった。これから、連中を片付けに行く。仲間の報告により、連中の残りの数が把握できた」
 リアは起き上がった。少し眩暈を感じるが、我慢する。
「今から、ですか?」
「あぁ。夜は、僕たちの能力が高まるし、有利だからね」
 不安になって、ついノエに縋るような目を向けてしまった。ノエはリアへ、安心させるように一度頷く。
「そんなには、死者は出ないですよ。ある程度数を残し、暗示をかけて追い返すことになるので」
「暗示?」
「はい。全員を殺せば、また新たな追手が来るでしょうから。なので、人狼は全て始末した、又は嘘の新情報を覚えさせ、見当違いの場所を捜索するように仕向けるんです」
 リアはノエの腕を掴んだ。
「わ、私も一緒に行く」
「ダメです。危ないですし、体調だって悪いんですから」
「な、何も手伝えないのはわかってる。足手まといってことも。でも、一緒に行きたい」
 ノエはいい顔をしなかった。だがシリルは右手に腰を当てて、口元に笑みを浮かべる。
「いいよ」
「シリルさん!」
 ノエが非難の声を上げた。だがシリルは、ノエの意見を制止する。
「これも、社会勉強の一環だよ。これからまた、こういうことがないとも言い切れないしね。彼女には、きちんと見せておいたほうがいい」
「こんなの、見せなくてもいいでしょう」
「ノエ。辛いことや悲しいこと、それら全部隠すつもり?」
「えぇ。可能であるならば」
「君の溺愛ぶりにはほとほと感心するけれど、そんな歪んだ愛情は彼女を成長させないし、世間知らずだと、いずれ笑われる。僕たちの住む世界が血なまぐさいのは、お前がよく知っているはずだ」
 リアはノエへ、ずいと体を寄せた。そして、そのままノエを押し倒す。
「え? リア先輩……っ?」
 彼が戸惑っている内に、腹部の上へ跨った。我ながら大胆だと思いつつも、リアはやめない。
「私を連れて行ってくれないなら、これから毎晩シリル先輩といけないことしちゃうから」
「い、いけないこと……? なんですか、それ」
「ふふ。なんだと思う? あーんなことや、こーんなことかもね」
 ノエは不満げに眉を寄せた。
「ズルイですよ、そうやって脅すのは」
「私を連れて行ってくれないなら、ラウル君とシリル先輩と一緒に、毎日お風呂に入るから」
 シリルは堪え切れず、右手で口元を押さえて笑った。余程愉快だったようだ。
「いいね、それ。僕は構わないよ」
「そんなこと、絶対にさせるわけがないでしょう。……わかりました。同行を許可します。でも、リア先輩には、後方の部隊にいてもらいます」
 リアはノエの腹の上から降りた。彼が起き上がるのを待って、お礼を言う。
「ありがとう、ノエ君」
「いえ、お礼はいりません。後程、この件についてたっぷり話し合いをさせていただくので」
 にこにこと天使のような笑顔を浮かべるノエ。リアは背中がぞくりとする。こういうときの彼は、大抵怒っているときなのだと、もうわかっているからだ。いつも彼は穏やかに笑みを浮かべて本心を悟らせないが、こういうところだけはわかりやすい。
「わ、わかった」
 怯えつつも、了承した。ノエはリアの額へ手を当てて、あまり良くない顔。
「僕は主力部隊へ加わらないといけないので、リア先輩と一緒にいられません。なので、不服ですが、ラウルさんに任せようと思います」
 いつの間にか、テントの中にラウルがいた。気配を感じなかったので、リアはびくりと体を揺らす。
「……わかった」
「リア先輩のこと、ちゃんと守ってくださいね。指一本でも怪我させたら、許しませんから」
 表情は普通だったが、ノエの声のトーンがやや低かった。
「お前に言われなくとも、怪我なんてさせるかよ」
 リアはノエの服の裾を軽く引っ張った。彼はすぐに気づき、振り返る。
「どうしましたか? リア先輩」
「お願いだから、無理はしないでね。教会の人たち、人狼族を殺せる特殊な武器を持ってるし……」
 何度も、人狼族が殺される姿を目にした。屋敷での惨劇も、忘れられない。だがそんな不安を和らげるように、ノエはリアの手を握った。
「大丈夫です。僕、こう見えて結構強いので」
「……ちゃんと無事に帰ってきたら、また一緒にお出かけしようね」
 ノエは嬉しそうにした。
「どこか行きたい場所があるんですか?」
「え? あ、えっと、いっぱいあるよ! たとえば、プールとか」
「プール? リア先輩の水着姿を他の男に見せるのは殺意が湧きますが、どうしても、というのであれば、お付き合いします。……あぁ、そうだ。いっそ、ホテルのプールを貸切にしましょう。そうすれば、僕も安心ですし」
 笑顔でとんでもないことを言われた。リアはしょんぼりする。
「やっぱり、プールはいいよ……」
「遠慮しなくていいんですよ?」
 プールへ行くときは、別の誰かとこっそり行こうと思った。薄々わかってはいたが、ノエは考え方が突飛すぎておかしい。リアは立ち上がると、ラウルのそばまで歩いた。
「ラウル君。また迷惑をかけちゃうけど、許してね」
「それは構わない。後日たっぷりと、お礼をしてもらう予定だしな」
「私でできることなら、なんでもするよ! あ、そうだ。私ね、最近レパートリーに、グーラッシュっていう料理を作れるようになったの。ラウル君さえよければ、夕食を作らせて」
 ラウルはほう、と笑った。
「それ、いいな。お前の手料理、珍しいし。……ちゃんと作れるのか?」
「つ、作れるよ。以前、調理実習で作ったお菓子、食べたでしょ?」
「あぁ、あれな。でもあれ、お前が一人で作ったわけじゃねえだろ?」
「そ、そうだけど……」
 ラウルはリアの体を両腕に抱き上げた。
「お前の手料理は楽しみにしておくとして、そろそろ行くぞ。出発の時間だ」
 シリルはもうテントからいなくなっており、ノエも支度を終えていた。
「それでは、僕は先に行きます。リア先輩、また後で」
 ノエもテントから出て行った。ラウルも続いて外へ出るのだが、既に誰の姿も見えない。
「村を出るまでは、お前は目を閉じてろ」
 リアは言われた通り、目を閉じた。


 シリルは、教会の者たちが用いていた吊り橋まで辿り着いた。既に爆弾は撤去してあり、周囲は占拠している。本来であるならば、群狼村から人狼を出さないように、教会のハンターたちはこのような手段をとった。じわじわと追い詰め、嬲り殺しにするのが目的だったのだろう。けれども、狩る側から、いつの間にか狩られる側になっていたなど、予想もしないだろう。先導をしているのは執事のナタナエルとその側近たちだが、彼らはあっという間に敵を駆逐していく。
「ナタナエル。敵の強さはどうだ?」
 ナタナエルは両手につけた鉤爪をちらりと見た。
「あまり、戦い慣れてる感じがしません。西欧のハンターたちと違い、とても弱いです。異端審問官が持つ、聖血を染み込ませた木より作られた十字架も持っていませんし」
 聖血は、一般的に言われているモノとは異なる。一般的に聖血といえば、教会が唯一神としている者の血を指す。だがここで言う聖血とは、魔の者を触れるだけで消滅させることが可能な者の血を言う。聖人として教会が密かに保護しており、魔の者かどうかを判別する聖水も、その人物たちが作っているとされている。
「ふうん、じゃあそこそこ強いのは、あの司祭だけか」
 一人だけカソックと呼ばれる服を身にまとった男。それが指揮を執っている。
(遊撃をノエに任せ、吊り橋から逃げられないように後方部隊に任せてきた。あとは、連中を狩り、村人たちの記憶を操作し、その後神狼家に連絡をとって後片付けをしてもらい……)
 シリルは今後やるべきことを考えて、頭痛を感じた。そうして、自らが抱いていた違和感が、間違いではなかったと考える。
(群狼村には、未熟な若い人狼が多くいる。そのため、これまでにもトラブルが幾度もあった。だがその都度、情報封鎖や目撃者の記憶の消去、事件そのものをなかったことにしてきた)
 徹底的に、自分たちの存在を隠してきたのだ。けれども少し前、人狼によって襲われた人間の遺体が、何者かに盗まれた。本来であるならば、いつものように隠ぺいされていたものだ。その遺体は目立つところに放置され、結果多くの人間が知ることとなった。ただちに情報規制などを行ったために、大ごとには至らなかったものの、例の一件がきっかけになったのは間違いない。
(誰か、この場所の存在を意図的に知らせたモノがいる。そしてそれは、人間ではない)
 風目橋を爆破して落としたのは、教会の者たちだろう。だが結界を張ったのは、別の者だ。そのことに気付いたのは、旧群狼村へ到着をした後だった。配下より結界の起点を見つけたと報告を受け、確認したのだ。だからシリルは調べたのだが、その術式は人間が使えるものではなかった。しかも起点は何ヶ所か分散されており、全てを壊すには数日単位で作業をしなければならない。そのため、結界を破壊するのは後回しにしたのだ。
(裏で糸を引いている奴がいる)
 ハンターの一人を捕らえて話を聞き出したのだが、どうやら彼らは結界を張ったのが、シリルたちだと思いこんでいるようだった。橋を壊して群狼村に閉じ込めたつもりだったが、逆に結界を張られて閉じ込められた。そう考えた彼らは、このような強引な策をとったようだ。
(なぜ閉じ込めた? 僕らを互いに潰し合せるため? いや、何かもっと別の理由な気がするな)
 シリルはただただ、憂鬱になった。


 荒骨山から群狼村へ戻ってきたリアは、ラウルと数人の護衛と一緒に公園にいた。リアの家の近くにある、小さな公園だ。ミシェルやラウルと遊んだ思い出のある公園だが、今はシリルたちのことが心配で仕方がなかった。
(何だろう。さっきから、笛の音が聞こえてくるんだけれど……)
 風や葉擦れの音に混じって、笛の音がはっきりと聞こえた。むしろ、うるさいぐらいである。リアが疑問に思っていると、隣にいるラウルが喋りだした。
「占拠されていた東の村役場は制圧完了したらしい。南の旅館もさっき終わったから、後は講堂と己岡っていう男だけだ」
 リアにはさっぱりわからないが、ラウルにはわかるらしい。
「どうしてわかるの?」
「特殊な笛を使ってて、それで連絡を取ってる」
「あぁ、さっきから聞こえてるこの笛の音? こんなにうるさくしたら、笛を吹いている人が居場所を特定されて、危ないんじゃ……」
 ラウルは両腕を組んだ。彼にじっと見つめられ、リアは奇妙そうにする。
「この笛の音は、人間の耳では聞こえない周波数だ。だから問題ない」
「そうなの?」
 リアは目を丸くした。
「……ずっと気になっていたんだが、お前、能力が強くなっていないか? ほんの少し前まで、この音は聞こえていなかっただろ」
 まるで普段から笛を使っていたような言葉だった。否、実際に笛を用いて連絡を取り合っていたのだろう、と察する。
(傷が治らないようにする薬、飲めてないから……)
 薬を飲まなければ、彼らが利用している笛の音も聞こえるのだと知った。
「うん、そうだね」
「驚かないんだな」
「……、自分の力がだんだんと強くなっているのを、知っていたから」
 昔は薬で傷がすぐに癒えるのを抑えられていたが、今はもう完全に抑えられない。もしも薬を飲むのをやめてしまえば、どうなるのだろうと怖かった。何か得体のしれない存在になるのではと、恐ろしいからだ。するとここで、ラウルがリアの額に手を当てた。
「熱が、少し上がったか? もうちょっと待て。終わったら、ゆっくり休ませてやるから。ベンチへ座ってろ」
 ベンチへと座らされた。
「大丈夫だよ。これぐらい」
「熱があるのに、大丈夫なわけねえだろ」
 本当に大丈夫だと言おうとして、一際大きな笛の音が鳴り響いた。ラウルは舌打ちをする。
「どうしたの? 何か、よくないことがあった?」
「指揮を執ってた己岡って野郎が、逃亡したらしい。風目橋付近から飛び降りたって」
「え!」
「結界を一瞬だけ無効化する特殊な道具を持っていたらしく、それで通り抜けたらしい。……厄介なことになった。もしも教会に群狼村でのことを報告されたら、かなりまずい事態になる」
 リアは青ざめた。今回の出来事よりも、更に悪いことが起きるかもしれないと、考えたからだ。
「ど、どうするの?」
「ひとまず、お前を家まで送る。その後のことは、シリルが決めるだろ」
 これ以上の惨劇など、想像すらしたくなかった。


 その男は、川から這い上がってきたびしょ濡れ姿の己岡を見ていた。川に落ちる前に相当な手傷を負ったのか、全身が切り刻まれている。己岡は苛立たしげにしており、先ほどからずっと、呪詛のごとく罵っている。
「もうちょっと頑張ってくれると思ったのに、お前さんたち教会も役に立たないねぇ」
 己岡はびくりと震え、背後へ振り返った。無理もない。気配を感じさせず、相手の背後に無言で立っていたのだから。己岡は両目を大きく見開いていたが、すぐに距離をとろうとした。けれども、動けない。なぜと彼は自分の両足を見下ろす。すると、本来ある筈の膝から下が、なくなっていた。
「ヒッ……! な、なぜっ」
「なぜって、そりゃ俺が、あんたの足を切り落としたからに決まってるだろ」
 手にしている戦斧を見せた。人の体など簡単に切断できるほどの重量感があり、その刃からは血が滴り落ちている。
「お前は、誰だ。何者だ! 人狼の仲間か!」
「ハハッ、答えると思うか? 今から死ぬアンタに」
「報復のつもりか」
 この問いに、男は微笑んだ。
「……あぁ、そうだな。俺の個人的な怨恨も入ってる。アンタは、俺の大事な娘を傷つけたからなぁ……」
「娘、だと?」
「おっと、喋りすぎたか。――じゃあな」
 かなりの重さがある戦斧を、左腕だけ軽々と持ち上げた。それを、己岡の頭上から下ろした。本来ならば自分が直接手を下さなくても良かったのだが、敢えてそうしたのはやはり少し感情的になっていたからだろう。男は配下の者に、遺体の処理を任せた。そしてパンツのポケットに入れていた携帯電話を取り出すと、とある人物へ連絡をする。
「あぁ、俺、俺。今片付いた。もうちょっと雑草を刈ってくれるかと思ったんだが、見込み違いだったわ」
 嘲笑を浮かべてそう言った。電話の相手も、やや呆れ気味に返す。
「洟から期待なんてしていなかったくせに。――姫は?」
「我らが姫君は、無事だよ。ただ……、生気の枯渇を起こしかけてるようだ。遠目での確認だが、間違いないだろう。あの状態じゃ、いずれまずいことになる。……まだ監視を続けるのか?」
 男としては、これ以上彼らに懐かれるのは避けたかった。彼女のためを思えばこそであり、後々面倒な事態になるのはわかっているからだ。
「本当なら我々の近くで育みたいけれど、今はまだ準備が整っていないから危険すぎる。木を隠すなら森に、と言うだろう?」
「……じゃあ、枯渇はどうするんだ? 早く対処しなければ、飢餓状態になるぞ」
「問題ない。彼らが何とかしてくれるだろう」
 一瞬、何を言われたのかわからなかった。
「……は? 彼らって……。まさか、本気じゃないだろうな」
「本気だよ。彼女の姫としての能力も高まるし、人間を食べるより遥かに効率がいい」
「……、相変わらず、残酷だな」
「褒め言葉として、受け取っておくよ。……では、引き続き頼んだよ」
「仰せのままに、我が王」
 通話を切った。それとともに、男の姿もまた、風のように掻き消えた。

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